複式簿記を基礎とした会計システムの素晴らしさ

現代の会計システムは、私たちの日常生活に欠かせない存在です。しかし、改めてその仕組みを見つめ直すと、その優れた特徴に驚かされます。会計システムは、単にコンピュータを利用したシステムというわけではなく、複式簿記という手法によって取引情報が記録され、仕訳日記帳、元帳、残高試算表の流れで転記・集計されて、組織の財政状態と経営成績を示す財務諸表が体系的に作成される仕組みを指します。この仕組みにはどのような特徴があるのでしょうか?

1.複式簿記の原理

複式簿記は、会計の基本的な記録方法の一つ。その特徴は、1つの取引を原因と結果から借方と貸方に振り分け、それぞれ同一金額で記録することです。貸借平均の原理が機能し、貸借の金額が常に一致します。収益から費用を差し引いて損益を計算することも可能で、複式簿記は財務諸表の作成にも役立ちます。複式簿記を出発点にして、取引情報が転記・集計されることで、組織の財政状態や経営成績を示す財務諸表が体系的に作り出されるのです。

※単式簿記との比較

単式簿記は、複式簿記より簡略化されたもので、いわば家計簿のようなもの。1つの取引を1面から記録します。具体的には、現金に着目する場合、現金の受け払いのみ記録し、現金の在高を把握することが主目的になります。項目として入出金の原因を記録することはあり得ますが、複式簿記でいう貸借平均の原理や貸借対照表等式は必ずしも機能せず、記帳に関する誤りや不正を防止するには難があります。組織の財政状態と経営成績を示す財務諸表が体系的に作成される仕組みの基盤になるとも言い難いです。

2.組織の持続と成長を支える複式簿記の利点

複式簿記は、組織の持続と成長において重要な役割を果たしています。なぜなら、獲得した利益を利益剰余金として管理できる仕組みが内在しているからです。この仕組みにより、組織は解散せずに出資者への配当や払い戻しを実現することができます。組織の安定的な運営や成長にとって、この仕組みは欠かせないものです。

3.貸借平均の原理と貸借対照表等式の重要性

複式簿記の中でも特に重要な原理として、貸借平均の原理があります。これは、貸方の金額と借方の金額が常に等しいという原則です。この原理に基づいて転記・集計された貸借金額が貸借対照表に反映され、その結果、「資産=負債+純資産」という貸借対照表等式が成り立ちます。貸借対照表等式は、組織の財務状態を把握する上で不可欠なものであり、正確な情報を提供することで経営判断に役立ちます。また、資産、負債などの状況を追跡することにより、記帳に関する誤りや不正を防止するのにも役立ちます。

3.1.貸借平均の原理

【例】 商品を販売し、現金100を得た。

  仕訳:(現金)100(売上)100
  
  貸借平均の原理は、貸方の金額と借方の金額が常に等しいという原則です。
  上の例では、商品販売の結果、現金を得ているので現金勘定を借方に記録します。
  同時に、売上が生じているので売上勘定を貸方に記録します。この場合、借方と貸方の金額は
  100と等しくなります。

  勘定(勘定科目)は取引を分類するために用いるラベル。複数発生する取引を特定の勘定科目
  で集計することにより、特定の取引を管理するために使います。

3.2.貸借対照表等式

  貸借対照表において「資産=負債+純資産」の関係が成り立ちます。
  これは、複式簿記の貸借平均の原理から帰結されます。
  複式簿記で記録された貸借金額が一致した取引情報を転記、集計してできたものが貸借対照表
  ですから、当然に、貸借対照表の貸借金額も一致します(資産=負債+純資産貸借対照表)。

4.複式簿記の起源と人類の知恵の結晶

複式簿記の起源は、およそ1300年前後のイタリアにさかのぼるとされています(諸説あります)。複式簿記を基礎とした会計システムは、人類の知恵と経験の結晶と言えるでしょう。現代の会計システムの基礎となるこの手法は、経済活動や組織の運営において重要な役割を果たしてきました。私たちは、この知恵を受け継ぎ、進化させながら現代の会計システムを利用しています。

一方で、会計システムが、倫理的、文化的枠組みに溶け込んでいるときに、より効果を発揮するとも言われ、会計システムを維持し続けるには、強固な意志と経営規律が必要です。