PLATEAU(プラトー)のデータをUnityに取り込んで都市をサイバー空間上に再現してみた
PLATEAU(プラトー)は、国土交通省が主導する3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクトです。PLATEAU(プラトー)で整備されたデータを使えば、サイバー空間上に都市を再現できます。今回、ゲームエンジンであるUnityに、PLATEAU(プラトー)で整備されたデータを取り込みサイバー空間上に新宿の一角を試験的に再現し、キャラクタとなって街を歩く体験や、まるでドローンで空中撮影をしているかのような動画を制作をしてみました。この3D都市モデルの可能性を皆さんにお伝えしたく、今回、記事にしました。
1.PLATEAU(プラトー)とは
「PLATEAU(プラトー)」は、国土交通省が主導する3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を促進するプロジェクトです(詳細については、「PLATEAU(プラトー)」の公式ホームページで確認できます)。
このプロジェクト名「PLATEAU(プラトー)」は、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズと精神分析家フェリックス・ガタリの著書「千のプラトー|Mille PLATEAUx」に由来しています。彼らの著書において、「プラトー(高原・台地)」という言葉は、始まりでも終わりでもない精神の交差点を表し、統一的な構造ではなく多様で自律的、分散的なシステムが平面的に繋がり、強靭性を持つ哲学的なアイデアを表しています。PLATEAU(プラトー)というプロジェクト名には、3D都市モデルが社会に無数の結節点を提供し、自律的で強靭な世界の発展することへの期待が込められているとのことです。
PLATEAU(プラトー)で整備された3D都市モデルデータは、「G空間情報センター」からダウンロード可能です。今回の新宿の一角の試験的な再現においても、G空間情報センターからデータをダウンロードし活用しました。
Tips G空間情報とは
G空間情報とは、地理空間情報をいい、位置情報に建築物データや行政データなどの多様な情報を組み合わせたものを指します。このような情報を活用したシステムの典型的な例としては、カーナビゲーションシステムが挙げられます。
G空間情報センターは、様々な主体が様々な目的で整備している地理空間情報(G空間情報)の有効活用と流通促進を図ること、また社会課題を解決するアクターの後方支援を行うためのデータ流通支援プラットフォームとして2016 年 11 月 24 日に設立されたサイトで、一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会が運営母体となっています。利用者が必要となるG空間情報や関連する情報をワンストップで検索入手できるサービスなどを提供しています。
2.Unityとは
Unityは、ゲームやアプリケーションの開発に広く使用される人気のあるゲームエンジンです。このエンジンは3Dおよび2Dのグラフィックス操作や物理シミュレーションなど、多岐にわたる機能を提供し、ゲーム開発に限らず建築、医療、教育などの領域でも活用されるソフトウェアです。
今回、PLATEAU(プラトー)で整備された3D都市モデルデータを導入し、新宿の一角を3Dで再現する際にUnityを利用しました。さらに、街を歩く3Dキャラクターの実装やサイバー空間の撮影(バーチャルカメラ)、そして撮影データをMP4やPNG形式で出力する際にもUnityを活用しました。
なお、3Dキャラクタは無料で使用可能なユニティちゃん(© UTJ/UCL)を使用しました。
3.サイバー空間上に新宿の一角を再現
ゲームエンジンであるUnityに、PLATEAU(プラトー)で整備されたデータを取り込み、サイバー空間上に新宿の一角を試験的に再現してみました。
具体的な手順としては、G空間情報センターからデータをダウンロードし展開すると、複数のフォルダができますが、その中のbldgフォルダ(建築物データ)とdemフォルダ(土地)を使用して新宿の一角を試験的に再現しました。
なお、bldgフォルダ(建築物データ)の中にはlod1とlod2という名前のフォルダができます。ここでいうlodとは「Level of Detail」の略であり、データの詳細度を示しています。lod1はデータが軽量である反面、詳細な形状はほとんど表現されていません。一方、lod2はより詳細な形状を持ちますが、処理に時間がかかる重さがありました(古いパソコンを使用していたことも影響しているかもしれませんが、処理に時間がかかる状況がありました)。
3.1.建築物モデル(lod1)
Unityのバーチャルカメラ機能を利用して、カメラをドローンのように移動させ、その途中でスナップショットを撮影したものが以下の画像です。わずかなプログラム(2~3行程度)を組む必要はありましたが、ほとんどの部分はプログラムを書かずに実装できました。

3.2.建築物モデル(lod1)で空中撮影
Unityのバーチャルカメラ機能を活用し、カメラをまるでドローンのように動かし、その様子を動画(MP4形式)に記録しました。プログラムなしで実装しています。
3.3.建築物モデル(lod2)で街を歩く体験
無料で使用可能なユニティちゃん(© UTJ/UCL)を使って、歩行する3Dキャラクタを用意し、そのキャラクタを追跡するようにUnityのバーチャルカメラを設定し、サイバー空間を撮影しました。撮影したデータはMP4およびPNG形式で出力できるようにしました。MP4への出力には無料のプラグインを活用し、PNGへの出力にはわずかなプログラム(2~3行程度)を記述しました。ほとんどの部分はプログラムなしで実装しています。以下の画像は、キャラクタがジャンプした時に撮影したものです。

4.まとめ
4.1.新宿の一角をサイバー空間上に再現し、新たな可能性を感じる
ゲームエンジンであるUnityでPLATEAU(プラトー)で整備されたデータを取り込み、新宿の一角をサイバー空間上で試験的に再現し、キャラクタとなって街を歩く体験や、まるでドローンで空中撮影をしているかのような動画を制作をしてみることで、さまざまな経験ができ、新たな可能性を感じました。
4.2.データの活用の可能性を考える
この試みから感じたことは、PLATEAU(プラトー)で整備されたデータを活用する方法は、中小企業や個人事業主にとっても身近なものとなり得るという点です。公開されている3D都市モデルのユースケースは、しばしば大規模なものが多いように思えますが、今回の試みでは、ほぼプログラムを使用せず簡素な方法で実装することができました。この実現には、無料や低コストなツールの提供が大いに貢献しています。これを考慮に入れると、中小企業や個人事業主がオープンデータを有効活用し事業に応用する可能性を見いだすことが重要だと感じます。そして、オープンデータをビジネスに転換するアイデアが大いに求められていることを実感しました。
4.3.課題と展望
しかし、3D都市モデルはまだ全国的に整備されているわけではなく、地域によってばらつきが見られます( 3D都市モデルの整備状況は こちら )。2027年までに500都市に広がる計画が進行中であるとのことですが、地域的な偏りを解消し、全国的に展開されることを期待しています。
一方で、古いパソコンの影響もあるかもしれませんが、建築物の表示処理に時間がかかる状況がありました。このようなハードウェアの制約が、3D都市モデルを広く普及させる上での課題となっている可能性があります。高性能なハードウェアの普及やクラウドサービスの利用によって、この問題を解決できる可能性があります。企業や個人が今後のメタバースや3D空間データを活用するにあたって、ハードウェアの充実は不可欠です。
4.4.最後に
PLATEAU(プラトー)のデータとUnityの組み合わせによって、サイバー空間上の都市の再現やそれを活用した仕組みに幅広い可能性があると感じます。中小企業や個人事業主にとっても、オープンデータとツールの活用が事業の成功につながる可能性があることを改めて感じました。同時に、今後の技術発展やインフラ整備によって、より充実した3D空間の活用が実現することを期待しています。