半歩先行くExcelグラフの活用術:バブルチャート、箱ひげ図
Excelは、データの整理や計算において非常に強力なツールです。しかし、Excelの機能は単にデータの入力と計算に留まりません。Excelのグラフ機能においては、よく知られた棒グラフや折れ線グラフなどにとどまらず、さらに高度なグラフの作成も可能です。
本記事では、バブルチャートと箱ひげ図に焦点を当てて、その活用術を探っていきます。これらのグラフは、データの特性や関係性を直感的に理解するために非常に役立つものです。単にデータを可視化するだけでなく、データのパターンや傾向を把握し、意思決定をサポートするための強力なツールとして活用できます。
Excelの真のパワーを引き出し、より深い洞察を得ることで、ビジネスの成功に大きく貢献できるのではないでしょうか。
1.バブルチャート
バブルチャートは、3次元の情報を2次元上に表現するもの。複数の要素を同時に比較することが可能になります。ターゲット顧客の検討シーン、販売商品の検討シーン、販売チャネルの検討シーン、販売地域の検討シーン、事業部別人員数の検討シーンについて以下に例示します。
1.1.ターゲット顧客の検討

バブルチャートは、上図のようなグラフです。この例では、顧客の売上をX軸に、顧客の利益をY軸にとり、顧客としての魅力度を示すグラフを作成しています(AAAなどが社名です)。顧客がポジショニングしている点は、大きさの異なるバブル(円)で表現されており、バブルの大きさは当社の売上実績を示しています。このような多次元のデータ表現により、複数の要素を同時に比較することが可能になります。


これらの例は、同一データセットを軸を変えてグラフ化したもの。
左側のグラフは、顧客の売上をX軸に、顧客の売上成長率をY軸にとり、グラフ化しています(AAAなどが社名です)。顧客がポジショニングしている点は、大きさの異なるバブル(円)で表現されており、バブルの大きさは当社の売上実績を示しています。
右側のグラフは、顧客の売上をX軸に、当社の売上実績をY軸にとり、グラフを作成しています(AAAなどが社名です)。顧客がポジショニングしている点は、大きさの異なるバブル(円)で表現されており、バブルの大きさは顧客の売上成長率を示しています。
X軸、Y軸、バブルの大きさにどの項目を設定するかにより、グラフの見え方が変化する様子が確認できると思います。顧客の特性や当社との関係性を直感的に理解するために非常に役立つと考えます。こうしたグラフを活用してターゲット顧客を検討してみてはいかがでしょうか。
1.2.販売商品の検討

この例は、商品売上をX軸に、商品利益をY軸にとり、商品販売実績をグラフ化しています(Uなどが商品の大分類です)。商品がポジショニングしている点は、大きさの異なるバブル(円)で表現されており、バブルの大きさは商品の利益率を示しています。このような多次元のデータ表現は、商品の特性を直感的に理解するために非常に役立つと考えます。こうしたグラフを活用して販売商品を検討してみてはいかがでしょうか。
1.3.販売チャネルの検討

この例は、チャネル別売上をX軸に、チャネル別利益をY軸にとり、チャネル別販売実績をグラフ化しています(amazonなどがチャネルです)。チャネルがポジショニングしている点は、大きさの異なるバブル(円)で表現されており、バブルの大きさはチャネルの利益率を示しています。このような多次元のデータ表現は、チャネルの特性を直感的に理解するために非常に役立つと考えます。こうしたグラフを活用してチャネルを検討してみてはいかがでしょうか。
1.4.販売地域の検討

この例は、地域別売上をX軸に、地域別利益をY軸にとり、地域別販売実績をグラフ化しています(北海道などが地域です)。地域がポジショニングしている点は、大きさの異なるバブル(円)で表現されており、バブルの大きさは地域の利益率を示しています。このような多次元のデータ表現は、地域の特性を直感的に理解するために非常に役立つと考えます。こうしたグラフを活用して地域を検討してみてはいかがでしょうか。
1.5.事業部別の人員数の検討

この例は、事業部別売上をX軸に、事業部別利益をY軸にとり、事業部別販売実績をグラフ化しています(Aなどが事業部名です)。事業部がポジショニングしている点は、大きさの異なるバブル(円)で表現されており、バブルの大きさは事業部の人員数を示しています。このような多次元のデータ表現は、地域の特性を直感的に理解するために非常に役立つと考えます。こうしたグラフを活用して事業部別人員数を検討してみてはいかがでしょうか。
2.箱ひげ図
箱ひげ図は、データの分布や変動の特徴を示すために使用されるグラフです。データの中央値、四分位数、外れ値などの統計的な情報を一目で把握できるため、データの傾向やばらつきを理解するのに役立ちます。データの外れ値や異常値の検出にも有用です。品質データの検討シーン、残業時間の検討シーンを以下に例示します。

中央値: 箱ひげ図の中央にある線(箱の中央)がデータの中央値を表しています。中央値はデータを昇順に並べた際に中央に位置する値であり、データの中心傾向を示します。
四分位数: 箱ひげ図の上部と下部にある水平線は四分位数を表しています。上部の線は第3四分位数(上位25%の値)を、下部の線は第1四分位数(下位25%の値)を表しています。これにより、データの上位と下位の範囲が可視化されます。
最大値と最小値: 箱ひげ図の上部の線から上方に延びる線(ヒゲ)は、データの最大値を表しています。同様に、下部の線から下方に延びる線もデータの最小値を表しています。ヒゲの長さはデータの範囲を示し、外れ値を探すのに役立ちます。
2.1.品質データ(原材料の切り替え)

あるパーツの原材料を安価なものに切り替える場合を考えます。上図は、X軸に従来の原材料で製造した場合と新たな原材料で製造した場合の2パターンを置き、Y軸に品質データ(例えば長さ)を置いて箱ひげ図にしたものです。
この箱ひげ図をみれば、品質データの平均値は新旧でほぼ等しいですが、品質のばらつきには大きな差があることが一目で把握できます。
この場合、安易に安価な原材料に変更すれば、問題が生じる可能性があることがわかります。
2.2.残業時間

上図は部門別の残業時間を箱ひげ図にしたものです。
箱ひげ図を見ることで、以下の点が一目で把握できます。まず、各部門ごとの残業時間の平均に違いがあること。また、個人の残業時間のばらつきが部門により大きく異なること(例えば、営業部門は個人の残業時間のばらつきが大きいなど)。さらに、営業部門と総務部門において異常値がある可能性があることも把握できます。
特に総務部門では、箱ひげ図の上部に特異ポイントが表示されています(○で示された点が特異ポイントで、Excelが一定の計算をして表示する外れ値です)。このデータは、真の残業時間を示しているのか、それとも残業時間のコンピュータへの入力ミスなのかなどの検討が必要です。
営業部門でも、個人の残業時間のばらつきが大きいことから、データが真の残業時間を示しているのか、営業部門において業務の平準化がなされているのかなどの検討が必要です。
数字だけを並べて見ているとデータの特徴を発見するのは難しいですが、箱ひげ図を活用することで比較的容易に特徴を発見できます。こうしたグラフを活用して業務改善などに役立ててみてはいかがでしょうか。
3.まとめ
本記事では、バブルチャートと箱ひげ図という二つのグラフタイプに焦点を当てて、その活用術について探ってきました。これらのグラフは、データの可視化において非常に役立つツールであり、データ分析やビジネスの意思決定を強力にサポートしてくれます。ビジネスに関するより深い洞察を得るためにこれらのグラフの活用を考えてみてはいかがでしょうか。